2024.01.24
新入社員に伴走し、成長を見届ける喜び – 田中淳子の『人材育成』応援ラジオ 書き起こし
本記事では、トレノケート株式会社で配信しているVoicy番組 田中淳子の「人材育成」応援ラジオ から、好評をいただいた放送をピックアップして文字としてお届けします。
音声でお聞きになりたい方は、Voicy内チャンネル をご覧ください。
田中淳子の「人材育成」応援ラジオ とは
パーソナリティは、人材育成に携わって38年、人材教育シニアコンサルタントの田中淳子が務めます。自社の人材育成を考える上でヒントとなるようなちょっとした知識やスキル、具体例など、人材育成にご興味・関心がある方向けに役立つヒントを毎日約15分でお話ししています。
今回は、トレノケート株式会社の社員との対談回 #156 新入社員の育成は未来への投資。新入社員研修の魅力と講師としての工夫や学び。【対談⑨(前編)/芝山賢(講師)】 を取り上げます。
クライアント企業様向けの新入社員研修を約30年間担当する芝山賢に、新入社員研修のやりがいから、アフターコロナでの対面研修における工夫などを語ってもらっています。
※なお、読みやすさを意図して、会話の内容、趣旨を変えずに表現などを一部変更しています。
INDEX
目次
業界に先駆けてスタートしたプロジェクトベースの新入社員研修に携わる
新入社員に伴走し、成長の手応えを得る
柔軟な運営を試される新入社員研修
ポストコロナ時代には「オンラインで発言できる」対面研修を
田中 淳子 (たなか じゅんこ)
トレノケート株式会社 国家資格キャリアコンサルタント、産業カウンセラー
ビジネススキル全般のコースを担当。新入社員研修からリーダー層、管理職層まですべての人材開発に携わる。2018年度からは「1Day REAL」シリーズを立ち上げ、「1日で学べる超実践的コース群」を充実させるプロジェクトを推進中。近年は、「全社モチベーション向上研修」「全社キャリア開発支援研修」など、「全社員向けの施策」のコンサルテーションから入り、研修とその後のフォローまでに関わっている。組織をより良くするとともに、働く個々人がよりハッピーになるお手伝いに力を注いでいる。
著書:はじめての後輩指導、ITエンジニアとして生き残るための「対人力」の高め方 (共著)、事例で学ぶOJT: 先輩トレーナーが実践する効果的な育て方
芝山 賢 (しばやま さとし)
トレノケート株式会社 Microsoft Certified Trainer (MCT)
IT講師歴30年以上。講師業だけでなく、研修の企画・教材開発、ITSSやiCDをベースとした人材育成体系の構築支援など人材育成関連業務に幅広く従事。特にトレノケートが提供する新入社員研修には様々な役回りで25年以上携わっている。ビジネスマナーからプロジェクトベースの演習まで幅広く可能なほか、企業に合わせたカスタマイズ対応や状況に合わせた講義の進行など、柔軟な対応を得意とする。
業界に先駆けてスタートしたプロジェクトベースの新入社員研修に携わる
田中
今日は芝山さんにお越しいただいています。よろしくお願いします。
芝山
みなさん、こんにちは。トレノケート株式会社ラーニングサービス本部に所属しております、芝山賢(しばやま さとし)と申します。本日はよろしくお願いいたします。
研修ではIT・プログラミングを中心に担当しています。
田中
芝山さんのキャリアを簡単に教えてください。
芝山
私は、1991年に日本DEC(※)というコンピューターメーカーに入社しました。最初の配属先がカスタマー向けの教育研修事業部門で、そこから講師職をスタートしております。その事業部がグローバルナレッジネットワークとして独立してから、トレノケート株式会社に名前が変わった現在までずっと講師がメインです。ただ、途中で営業部に行ったり、人材育成のコンサルティング部隊にいたり、案件を取りまとめる営業支援部隊にいたりなどと様々なキャリアも積んでいて、社内ではちょっと珍しい経験をしているかもしれません。
※DECの教育部門が1995年に独立し、グローバルナレッジネットワークとなりました。この日本法人およびアジアのグローバルナレッジネットワークが、トレノケートの前身となります。
田中
講師として入社した方はずっと講師を続けられることが多いので、たしかにそうですね。
社内外で「『新入社員研修』といえば、芝山さん」と言われていますし、ご自身でも新入社員研修が好きとおっしゃっていますから、今日はぜひそこを深掘りさせてもらいたいです。
そもそも今回の話に出る「新入社員研修」は、当社の新入社員への研修ではなく、お客様のIT企業やIT部門の新入社員の方への研修メニュー「NEW TRAIN®」を指しています。
1991年に「NEW TRAIN®」を立ち上げてからどんどんアップデートされているものの、入社したばかりのSE・ITエンジニアの卵の方たちが2〜3ヶ月後には開発の現場に入れるように、疑似プロジェクト体験なども当時から取り入れていました。
芝山
そうですよね。世の中に「研修中にプロジェクトを実際に進めてみる」という概念がまだない時代から、プロジェクトベースのトレーニングを実施していました。
田中
あの頃は最先端でしたよね。今は他の人材育成企業でも同様の研修は取り入れられていますが。
新入社員研修で、ユーザーへのヒアリングから始まり、要件定義、設計、コーディング〜テスト、デモンストレーションまで網羅した疑似プロジェクトを体験してもらうんですよね。
芝山
発表会やレポート提出も含まれているので、いわゆるビジネススキルやヒューマンスキルに分類されるプレゼンテーションスキルやドキュメンテーションスキルも鍛えられますし。ビジネスパーソンに必要な基本知識とスキルがあらゆる形で詰まった研修です。
田中
1991年に新入社員研修プロジェクトを立ち上げた時に、私以外の2人はITエンジニア経験のある講師だったんですよ。そこにプレゼンテーションスキルなどに通じている人も必要ということで私が加わり、3人でNEW TRAIN®を作り上げたんですよね。懐かしい。
その年に芝山さんが入社されて、そのあといつ頃から新入社員研修に関わり始めましたか?
芝山
入社直後に、その時の上司に新入社員研修の講師を希望したものの、受理されなくて。結局入社5年目の、グローバルナレッジネットワークへの移籍前後のタイミングで、初めて新入社員研修を担当させてもらえるようになりました。
田中
時代的にはWindows 95が世の中を席巻して、仕事の環境がパソコンに移行するという空気が盛り上がった頃ですかね。
芝山
そうですね。オフィスにパソコンが入り始める頃に、サブ講師(※)からスタートしました。
(※サブ講師:研修全体を中心となって進めるメイン講師に加え、受講者の演習支援など補助的に研修に関わる講師を「サブ講師」と呼んでいます)
田中
その時点では「システム開発」に関する研修や「プログラミング入門」コースなどを担当されていたんですよね。
芝山
はい。新入社員研修のカリキュラムに開発系のワークショップが多くて、その部分にアサインしてもらえたのがきっかけで新入社員研修に携わるようになりました。
新入社員に伴走し、成長の手応えを得る
田中
芝山さんは新入社員研修が特にお好きじゃないですか。それ以外の研修も手掛けていらした中で、なぜ新入社員研修がお好きなのか、教えてください。
芝山
理由は3つ挙げられます。
1つめは、0からのスタートをお手伝いできるところですね。新入社員のみなさんは、ビジネスパーソンとして真っ白な状態からスタートします。なので、先入観なしにいろいろなことを吸収してもらえる。それは講師から見るとちょっと怖いことではありますけれども。
自分が新入社員の時にちょっと苦労した経験もあるので、そういった壁を少しでも下げてあげられたらいいなって。新入社員研修にはすごく思い入れがあります。
特に弊社は新卒の新入社員を採用していない(※)ので、フレッシュな後輩がなかなかできません(笑)。
ですので、お客様の新入社員に対し、自分の後輩と思って研修に臨めるところが非常に魅力的だなと。
(※2023年時点。2024年度からは新卒新入社員を採用再開しました)
田中
つまり、真っ白なキャンバスのような状態の方に関わっていくことが楽しいんですね。
芝山
楽しいですし、やりがいを感じますね。
2つめは、研修期間内に受講者のみなさんの成長の軌跡が見られることですね。
トレノケートがメインで開催しているITエンジニア/ビジネスパーソン向けの講座は、一般的にはどんなに長くても1〜2週間で終わるため、受講者の方の成長を長期に渡って見ることはなかなかできません。一方、3〜4ヶ月間同じ方に向き合う新入社員研修では、スタート時点と3ヶ月後とで受講者の方にものすごく大きな変化が見られます。
受講者のみなさまのゼロからの成長過程を見ることができ、成長を支援できた実感が得られるのが新入社員研修の魅力ですね。
田中
その、伴走して見届けられる感じ、長時間関われる感じがいいな、ということですよね。
柔軟な運営を試される新入社員研修
田中
では、3つめは何でしょうか。
芝山
受講者の方への試行錯誤が、自分の成長につながることですね。
新入社員研修には、自分が新人時代に直面した壁を少しでも下げたい思いで取り組んでいます。ただ、かつての自分が考えていたことやその頃の苦労を元に研修を組んでも、相手も生身の人間ですから、自分の経験だけではどうしてもカバーしきれません。
そこでいろいろなパターンを試すことで、研修の運営がより柔軟にできています。
田中
新入社員研修以外の講座でもいろいろ試行錯誤は必要になると思いますが、芝山さんにとって新入社員研修の方がより魅力的なのはどうしてでしょうか?
芝山
研修期間が長いぶん、調整できる余地が大きいからですね。
講座や研修を運営する上で、決まった期間にカリキュラムを消化することは大事です。仮に、Webサイトに公開している研修の目次に10の項目が書かれているのに、実際の研修では5つまでしか終えていないとなると、ご依頼主の期待値に達していないことになりますよね。
一方、新入社員研修は期間が長いので、例えば、受講者に合わせて進め方を調整した結果、仮に前半で多少遅れても後半で挽回できるといった柔軟性があるんですよね。
しかも、新入社員研修ではクライアント企業様に研修担当の方がいらっしゃるので、状況に応じてご相談させてもらえますし、やむを得ず内容を削る場合も合意のもとで進められます。
田中
私は今は新入社員研修を担当していませんが、よくわかります。今週は5まで進めるつもりでいても、みなさんの飲み込み具合を考慮すると3までしかできそうにない。その時に、担当者の方へご相談した上で「残り2つの内容は来週以降にちゃんとキャッチアップするので、とにかくじっくり3つ目までをマスターしてもらう方に注力します」みたいな対応がしやすいですよね。期間が長いと、リカバリーが効きますし。
あと、新入社員研修以外の研修や講座と違って、受講者の方それぞれの違いが大きいのも研修運営に影響しますよね?
芝山
一般の研修や講座ではある程度ベースをお持ちの方が来られますが、新入社員の場合、学生時代のご経験が浅い方とバリバリ経験してこられた方との差が大きいですね。
田中
新入社員であっても経験者という方がいますからね。インターンで働いていらしたとか、一回仕事してまた学校に戻られて、新卒だけど27歳です、とか。
芝山
そもそも専攻がITか否かという要素もありますね。
そういったこともあって、新入社員研修は自分が想定している通りに進まないものですよね。だからこそ柔軟性が非常に重要だと思います。
田中
まとめると、新入社員研修は期間が長い上に受講者ご自身も真っ白なので、いろいろと創意工夫ができると。そこが、もちろん新入社員のみなさんのための研修ではあるものの、芝山さん自身の成長やスキルアップにもつながっているということなんですね。
ポストコロナ時代には「オンラインで発言できる」対面研修を
田中
今年(※収録時:2023年1月)もあと3ヶ月以内に新入社員のみなさんが来られますね。
今年の新入社員研修も担当予定ですよね?今からご準備なさっていることや、「今年はこうやってみよう」のような心構えはありますか?
芝山
今は学校で教える内容にもITが含まれ始めていますが、まだまだコンピューター未経験の方もいらっしゃいます。そういった方にはプログラミングは難しいと思われることもあるため、理解してもらうために何をご用意したらいいか、既存の研修カリキュラム以外にご用意できるものはないか、などを考えています。
そして先程「新入社員の方同士での差が大きい」とお話しした通り、研修の内容を学生時代に終えているなど、既に理解されている方もいらっしゃいます。そういう方にも何か別のコンテンツなどをご用意しないと、学びのない研修になってしまいますよね。
田中
飽きられたり、「このぐらいのことはもう知っている」と思われたりすることもありますよね。
芝山
1人1人のレベルに合った何かを用意できないかな、と考えています。
田中
あと、現在(※2023年1月時点)の大学4年生を例に挙げると、大学2年生、3年生、4年生とオンライン授業に適応して来られた方が2023年度の新入社員になりますよね。学生時代にオンラインやリモートに慣れている方たちへのアプローチには、どういった創意工夫をなさっていますか?
芝山
私の知る範囲では、オンラインよりも対面での新入社員研修を希望されるクライアント企業様が増えているように思います。
しかしその一方で、対面での会話があまり得意でない、むしろ積極的に参加できない学生さんが増えているようにも感じます。1対1ならまだ話ができても、複数人でのワークショップとなると引っ込み思案になってしまうんですね。
オンラインの弊害とは言いきれませんが、対面での研修に馴れていない方に「みんなで話しているから積極的に発言してください」と促しても、おそらくとても難易度が高いですよね。
そこで、自分に合った方法で意思表示をしてもらえるような研修の進め方を考えています。対面研修でもチャットや掲示板などのオンラインツールを併用することで、話さなくても済む手段を複数用意した方がいいだろうなと思っています。
田中
たしかに私も、コロナ禍以前の2017年頃には「みんなディスカッションしないな、深い話をしないな」と思っていました。誰かの意見に「うん、いいね」「いいね」とすぐ賛成してしまう。
その傾向が、オンライン授業の開始などで、対面での活動が減ったことによって加速した面はあるかもしれないなと。対面で相手の目を見ながら話す経験をそもそもあまりしていないからか、自分から話すのが怖いとか、発言しても大丈夫かな、などと思ってしまう可能性はある気がしますね。
つまり、ツールを使いながらでも、みんなで話し合っていいものを作り上げようというワークショップ運営を考えているのですね。本日はありがとうございました。
後編では、新入社員研修へ思い入れのある芝山からの、企業の人事担当のみなさまへのメッセージをご紹介します。