2022.11.17

「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」を読み解く – 田中淳子の『人材育成』応援ラジオ 書き起こし (#032 前編)

本記事では、トレノケート株式会社で配信しているVoicy番組 「田中淳子の『人材育成』応援ラジオ」 から、好評をいただいた放送をピックアップして文字としてお届けします。
音声でお聞きになりたい方は、Voicy内チャンネル をご覧ください。

 

「田中淳子の『人材育成』応援ラジオ」 とは
パーソナリティは、人材育成に携わって36年、人材教育シニアコンサルタントの田中淳子が務めます。自社の人材育成を考える上でヒントとなるようなちょっとした知識やスキル、具体例など、人材育成にご興味・関心がある方向けに役立つヒントを毎日約10分でお伝えします。

 

第1回となる今回は、 #032 厚労省「職場における学び・学び直し促進ガイドライン」&経産省「DXリテラシー標準」を読んでみる を取り上げます。前編で職場における学び・学び直し促進ガイドラインについて、後編でDXリテラシー標準についてご紹介します。

 

厚生労働省が6月29日に発表しました、職場における学び・学び直し促進ガイドラインについて読み解きをします。23ページの資料で文字がびっしりと書いてあるものを、できるだけコンパクトにお話しします。

この資料は人事や人材育成担当の方だけではなく、企業の経営者や労使など組織側の方、マネージャーやリーダーなど部下や後輩を抱えている方、そして働く個人にとっても必要なことが書いてあります。
どなたにでも関係あるガイドラインですので、ポイントを押さえたら、ぜひ原文にもあたってください。

INDEX

目次

学び直しが必要とされる背景と、企業・個人に求められること

自律的・主体的な学び・学び直しの重要性

学び・学び直しを促進する3つのプロセスと現場リーダーの重要性

最後に

学び直しが必要とされる背景と、企業・個人に求められること

まず前提条件として、環境の急速な変化に触れています。DXが加速していたり、ひとりひとりの職業人生もどんどん長くなっていたりします。こうした変化の時代で新しい付加価値を生み出す人が誰かと言うと、その主体は働く人ひとりひとりです。
そうした世の中では、働く人は学びや学び直しをしていく必要があります。

その中で喫緊の課題であるとされているのは、企業と働く人の双方がその意義や方向性について共通認識を持って協働することです。これにより、学びの好循環が生まれ、効果的な学び直しが期待でき、結果として企業と労働者の双方が持続的に成長できるようになります。

そのために企業がすべきことは、以下の3つです。

  1. 企業が主導して職業訓練を強化し、労働者の自律的・主体的かつ継続的な学び・学び直しを促進すること
  2. 人への投資という視点で学びや学び直しの重要性を認識すること
  3. ひとりひとりがやり甲斐や働き甲斐を持って能力を充分に発揮できるように、学びを継続的に支援していくこと

 

一方、働く人のキャリア形成の軸になっているのは自分の専門能力やこれまでの経験を通じて身についてきた能力です。その軸を確かなものにするためにも、自律的・主体的に、そして継続的に学びや学び直しに積極的に取り組んでいくことも必要になります。

自律的・主体的な学び・学び直しの重要性

資料では、これ以外にも人への投資や自律的・主体的な学び・学び直しの重要性についての記述が、その後も続きます。この自律的・主体的な学び・学び直しという言葉は、資料中で繰り返し使われています。

特筆したいのは、もはやOJTだけに頼っていられないと書かれている点です。
これまでの日本の現場力の強さはOJTが支えていた面がありますが、働き方が多様化し、仕事自体も変化している現在、上司自身が経験したことがない場面が出てきています。自分自身で分からないことを教えることは不可能ですから、OJT頼りだけではもう無理だという状況になっているのです。
ですので、広範囲にそして急速に経済や社会が変わっていく中でも人材開発を強化していくのならば、OJTに加えて自己啓発支援なども大事になってきます。

また、学びや学び直しは働く人ひとりひとりによって異なるはずですから、やはり、学びには自律性や主体性が求められます。
注目したいのは、“個々の労働者の自律性・主体性を強調することは、学び・学び直しを労働者任せにすることではない” という記述です。
つまり、あくまで企業と働く人の「協働」して行うべきこと、というわけです。

学び・学び直しを促進する3つのプロセスと現場リーダーの重要性

続いては、どのようなプロセスで学び・学び直しを促進して行くかの記載に移ります。

3つのプロセスがあります。

  1. 職務に必要な能力スキルなどを可能な限り明確にし、学びの目標を関係各位で共有すること
  2. その能力やスキルを学ぶために必要な教育機会の確保
  3. 自律的・主体的に学びや学び直しを後押しするため、伴走する支援策の策定

 

3番目に出てくる伴走する支援策に必要な登場人物が現場のリーダーです。この「現場のリーダー」が非常に重要な役割を持っています。

管理職などの現場のリーダーは、個々の働く人たちの身近な存在として、キャリアに寄り添い、労働者の学び直しを含めたキャリア形成をサポートする役割も担っています。

 

そのためには、企業のビジョンや経営戦略、人材開発の方針に加えて、学びや学び直しの重要性を理解する必要がありますが、管理職が自分からそこまで情報を取りに行くか不明ですので、そうしたことを学ぶことができる機会を設ける必要があります。また、現場のリーダーが人材開発の視点に立ち、ひとりひとりの労働者と双方向のコミュニケーションを取れるようにしていかないといけません。

企業は、現場のリーダーが人材開発に関する能力を含めたマネージメント能力の向上を支援したり、部下の人材開発に時間を当てられるように配慮したりする必要があります。

例えば、プレイヤーでもあるので1on1ミーティングを行う時間がない、という現場のマネージャーの嘆きをよく聞きます。この場合はその時間を取れるように業務上の時間的な配慮を行わないといけませんが、これは組織側の責任です、とガイドラインには明記されています。

最後に

企業や個人がすべきことのほかに、ガイドラインには政府が行っている様々な支援についても大量の情報とリンク先が掲載されています。その中に職務に必要な能力・スキルなどの明確化に関連して国が用意しているものが4つありますが、その一つが今年(2022年) の3月に策定された「DXリテラシー標準」です。

こちらについては、後編でご紹介します。